銭湯賛歌①<千住編>「風呂上りのヤキトリ、ハンペンは旨かった」


 昭和24年、北千住駅東口の足立区千住旭町で生まれた。アパートの2階、

4畳半一間に父母と3人暮らし。共同炊事場、共同便所、勿論風呂はない。

 当時、旭町には3軒の銭湯があった。美登利湯、梅の湯、弁天湯だ。親父と

よく、「美登利湯」に行った。住まいから近いせいもあったが、比較的新しく、

綺麗だったからだと思う。湯船の壁一面に、富士山と松原が描かれていて、塗

り替えた時は色鮮やかで、ペンキのにおいが強烈だったことが、印象に残って

いる。美登利湯の入り口の道路沿いに、いつもヤキトリの屋台が出ていて、い

い匂いがしていた。風呂上りに、ヤキトリで一杯ひっかける親父から貰った、

一串の旨かったこと。野良犬が尻尾振って、物欲しげに見ていると、つい4切

れしかないうちの1切れをやってしまう。そのたびに親父に叱られた。

 近所に住む祖母ちゃんは、「弁天湯」だ。知り合いがたくさんいて、連れて行

って貰って女湯に入る。道を挟んだ向かい側におでん屋があり、風呂上りにお

ねだりして食べたハンペンの旨かったこと。ある日、近所の悪餓鬼から女湯に

入っていることを揶揄され、それから弁天湯には行かなくなった。弁天湯は数

年前に失火して、現在その姿は見られない。

 

副区長
文:石川義夫(足立区副区長)