銭湯賛歌⑤<総論編>その2「銭湯で 季節感を味わう」


 昭和の時代、銭湯では季節を感じられた。どこの銭湯にも、脱衣場に縁側が

あり、小ぶりな庭に池が設えてあった。池には錦鯉が泳いでいて、庭のないア

パート暮らしの身にとっては、縁側に出て池の鯉を眺めるのも楽しみの一つ。

夏場には、コーヒー牛乳片手に夕涼みだ。蚊取り線香の匂いにも夏を感じた。

 湯船にも、季節感があった。例えば、端午の節句の「菖蒲湯」。「子供が健康

で元気に育つように」との願いが込められている。菖蒲を頭や腰に巻いて、イ

ンディアンごっこで遊んだことが、記憶に残っている。そして、冬至の「柚子

湯」。これに入ると風邪を引かないという。私ごとだが、拙宅でも、5月5日と

12月の冬至には、浴槽に菖蒲と柚子を浮かべている。

 足立区の銭湯では、秋に「林檎」が浮かぶ。浴場組合の吉田会長の発案で実

現した企画だ。当然、菖蒲も柚子も浮かぶが、それに加えて、「敬老の日」や

「家族ふれあいの日」には、入浴料金の割引がある。その他に、「頑固親父」事

業では、小学生に礼儀作法を躾けていただいている。公共性を身に付ける場を提

供していただいているのだ。浴場組合の皆様に、あらためて感謝申し上げる。

副区長
文:石川義夫(足立区副区長)